JIS Q13485
医療機器 ―品質マネジメントシステム ―規制目的のための要求事項

この資料は、医療機器のISO規格であるISO 13485がISO 9001の要求事項と
どのような相違点があるのかをまとめたものです。また、文書及び記録に関する規定もまとめています。

1.医療機器の定義 (規格3項:定義 3.7項)

 あらゆる計器、器械、用具、機械、器具、埋込み用具、対外診断薬、検定物質、ソフトウェア、材料又はその他の同類のもの若しくは関連する物質であって、単独使用か組合せ使用かを問わず、製造業者が人体への使用を意図し、その使用目的が下記の一つ以上あり、
― 疾病の診断、予防、監視、治療、又は緩和
― 負傷の診断、監視、治療、緩和、又は補助
― 解剖学的又は生理学的なプロセスの検査、代替、又は、修復
― 生命支援又は維持
― 受胎調整
― 医療機器の殺菌
― 人体から採取された標本の対外試験法による医療目的のための情報提供

 薬学、免疫学、又は新陳代謝の手段によって体内又は対象において意図したその主機能を達成することはないが、それらの手段によって機能の実現を補助するものである。
参考 この定義は、グローバル整合会議(GHTF:Global Harmonization Task Force 医療機器の管理システムの国際的な整合をめざす、各国の集まり)によって作成されたものである。

2.JIS Q 9001(2000)とJIS Q 13485(2005)の要求事項の相違点


JIS Q 9001(2000) JIS Q 13485(2005) 要 点
1.適用範囲
1.1 一般
b) 品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用、並びに顧客要 求事項及び適用される規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す場合。
1.適用範囲
1.1 一般
この規格の主目的は、品質マネジメントシステムに、整合された医療機器の規制要求事項を取り込むことを容易にすることである。その結果、この規格は、医療機器固有の要求事項を含み、規制要求事項として不適切なJIS Q ISO 9001の要求事項を除いている。……
顧客満足」及び「継続的改善」という用語は、品質マネジメントシステムに対して、世界中で医療機器の法令の整合化を促進することを目的とする規格には関係がないため除いている。
5.経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築及び実施、並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を次の事項によって示すこと。
5.経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築及び実施、並びにその有効性の維持に対するコミットメントの証拠を次の事項によって示す。
上記に基づく
5.2 顧客重視
顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にすること。
5.2 顧客重視
トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にする。
顧客満足が適切な医療機器規制の目的ではないという考え方に基づく。
5.3 品質方針
b) 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。
5.3 品質方針
b) 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の維持に対するコミットメントを含む。
5.1項と同じ趣旨
6.4 作業環境
組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、運営管理すること。
6.4 作業環境
追加事項
a)   組織は、要員の製品又は作業環境との接触が製品の品質に悪影響を与える恐れが場合、要員の健康、清潔さ及び衣服に対する文書化された要求事項を確立する。
b)    作業環境条件が製品の品質に対して悪影響を与える可能性がある場合、組織は、作業環境条件に対する要求事項を確立する。…
c)    組織は、作業環境内の特殊な環境条件下で、一時的に作業をするように要求されたすべての要員が、適切な訓練を受け、又は訓練を受けた者によって監督されることを確実にする。
d)    適切ならば、汚染された又は汚染される可能性がある製品の管理に対して、他の製品、作業環境又は要員の汚染防止のため、特別の取決めを確実にし、文書化する。
 
7.1 製品実現の計画 7.1 製品実現の計画
追加事項
組織は、製品実現全体を通してリスクマネジメントのための文書化された要求事項を確立する。リスクマネジメントによる記録は、維持する。参考3 リスクマネジメントに関する手引きとしてJIS T 14971:2003参照
リスクマネジメントは、医療機器の組織の品質マネジメントシステムによって扱われている多くの分野において、活動の性質や量を決定する重要な活動である。
7.2.3 顧客とのコミュニケーション 7.2.3 顧客とのコミュニケーション
追加事項
d) 通知書
「通知書」の定義
医療機器を引き渡した後に組織によって発行される通知であって、補足的情報を提供し、及び/又は次の事項に対し、とるべき処置を助言する。
―医療機器の使用
―医療機器の改造
―その医療機器の、供給した組織への返却。
―医療機器の破壊
7.3.2 設計・開発へのインプット 追加事項
e) リスクマネジメントからのアウトプット
7.1 製品実現の計画の追加要求事項に基づく
7.3.6 設計・開発の妥当性確認 追加事項
設計・開発の妥当性確認の一部として、組織は、国又は地域の法令の要求に基づいて、医療機器の臨床評価及び/又は性能評価を実施する。
 
7.4.2 購買情報 追加事項
7.5.3.2で規定されたトレーサビリティーに対して要求される範囲で、組織は、関連する購買情報、すなわち、文書及び記録を維持する。
 
7.5.1 製造及びサービス提供の管理 7.5.1.2 製造及びサービス提供の管理―固有の要求事項
7.5.1.2.1 製品の清浄性及び汚染管理
組織は、次に示す事項が該当する場合、製品の清浄性に対する文書化された要求事項を確立する。
( a)〜d)項が規定されているが、記載は省略)

7.5.1.2.2 据付活動
適切ならば、組織は医療機器の据付及びその据付の検証に対する受入基準を含む文書化された要求事項を確立する。

7.5.1.2.3 付帯サービス活動
付帯サービス活動が規定要求事項である場合、組織は、付帯サービス活動を実施し、その活動が規定要求事項を満たしていることを検証するために、文書化された手順、作業標準書及び、必要であれば、参照資料及び測定手順を確立する。

7.5.1.3 滅菌医療機器に対する特別要求事項
各滅菌バッチに対して使用された滅菌プロセスのためのプロセスパラメータの記録を、維持する。滅菌の記録は、医療機器の各製造バッチに対してトレースできなければならない。
 
7.5.2 製品及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認 7.5.2.1 一般要求事項
7.5.2.2 滅菌医療機器に対する固有の要求事項
組織は、滅菌プロセスの妥当性確認に対して、“文書化された手順”を確立する。滅菌プロセスは、最初の使用に先立って妥当性確認を行う。
 
7.5.3 識別及びトレーサビリティ 7.5.3.1 識別
7.5.3.2 トレーサビリティ
7.5.3.2.1 一般
7.5.3.2.2 能動埋め込み医療機器及び埋め込み医療機器固有の要求事項


7.5.3.3 状態の識別
・構成部品、材料及び作業環境条件が規定要求事項を満たせない原因となり得る場合、その記録。
・代理業者又は販売業者に対し、流通の記録を維持し、監査の際に提示できることを要求。
・出荷こん(梱)包荷受人の氏名及び住所の記録の維持。
8.測定、分析及び改善
8.1 一般
c) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
c) 品質マネジメントシステムの有効性を維持する。  
8.2 監視及び測定
8.2.1 顧客満足
組織は、品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の一つとして、顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視すること。この情報の入手及び使用方法を決めること。
8.2 監視及び測定
8.2.1 フィードバック
 組織は、品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定の一つとして、組織が、顧客要求事項を満たしているかどうかに関する情報を監視する。
この情報の入手及び使用の方法を決める。
 組織は、品質問題を早期に警告し、是正処置及び予防処置プロセスへのインプットとするため、フィードバックシステムに対する“文書化された手順”を確立する。
 国又は地域の法令が、組織に製造後の段階における経験の収集を要求している場合、この経験の確認をフィードバックシステムの一部にする。
「顧客満足」及び「顧客の受けとめ方」は、法令の要求事項として実施させるには主観的すぎるとい趣旨である。
8.2.4 製品の監視及び測定 8.2.4 製品の監視及び測定
8.2.4.1 一般要求事項
8.2.4.2 能動埋め込み医療機器及び埋め込み医療機器固有の要求事項
・検査又は試験について、それらを実施した要員の身元を記録すること。
8.3 不適合製品の管理 追加事項
製品の手直し(一回又は数回)を要する場合、組織は、元の作業手順書と同様の認定及び承認手続きに基づいて発行される作業手順書に、この手直しプロセスを文書化しておく。認定及び承認に先立ち、手直しが製品に及ぼすすべての悪影響を判定し、文書化する。
 
8,4 データの分析
a) 顧客満足
8.4 データの分析
a) フィードバック
 
8.5  改善
8.5.1 継続的改善
組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメントレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。
8.5  改善8.5.1 一般
……・・品質マネジメントシステムの継続的な適切性及び有効性を確実にし、維持するために必要なすべての変更を明確にし、実施する。

追加事項
組織は、通知書を発行し実施するための“文書化された手順”を確立する。

すべての顧客苦情調査の記録を維持する。調査の結果、組織外の活動が顧客の苦情の一因であると判明した場合、関連情報を、それにかかわっている組織間で交換する。

いわゆる顧客の苦情であれ、是正処置及び/又は予防処置を実施しない場合、権限を持つ人がその理由を承認し、記録する。

国又は地域の法令が報告基準に該当する不具合事象の通知を要求している場合、組織は、規制当局に対するそのような通知の“文書化された手順”を確立する。
 

3.ISO 13485文書化に関する要求事項

文書化に関する要求事項でISO 9001に対して追加されている事項は以下の通りである。
全般的に、ISO 13485は、多くの国の法令と一貫性があるISO 9001:1994に含まれている「文書化された手順」の要求事項と、同一水準を維持している。

4.2.1 文書化:一般 ・法令で規定されている「文書化」の要求事項
・製品の仕様・QMS要求事項を含む又は識別するファイル(完全な製造プロセス/適用できるなら「据付け・付帯サービス」を定めた文書)
5.5.1 責任及び権限 責任・権限の「文書化」
6.3 インフラストラクチャー 保守活動に対する要求事項の「文書化」
6.4 作業環境 ・要員の健康・清潔さ・衣服に対する要求事項の文書化
・作業環境の監視・管理のための「文書化された手順」又は「作業指示書」
7.1 製品実現の計画 リスクマネジメントのための「文書化された要求事項」
7.3.1 設計・開発の計画 ・設計・開発に対する「文書化された手順」
・設計・開発の計画の「文書化」
7.4.1 購買プロセス 購買プロセスの「文書化された手順」
7.4.2 購買情報 トレーサビリティに関連する購買情報の「文書」
7.5.1.1 製造及びサービス提供の管理:一般 必要な場合、参照する「測定手順」
7.5.1.2.1 製品の清浄性及び汚染管理 該当する場合、製品の清浄性に対する「文書化された要求事項」
7.5.1.2.2 据付け活動 ・適切な場合、据付け・据付けの検証に対する受入れ基準を含む要求事項の「文書化」
・ 組織以外の者による据付けを許容している場合、据付け・据付けの検証に対する要求事項の「文書化」
7.5.2.1 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認:一般要求事項 コンピュータソフトウェアの応用の妥当性確認に対する「文書化された手順」
7.5.2.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認:滅菌医療機器に対する固有の要求事項 滅菌プロセスの妥当性確認に対する「文書化された手順」
7.5.3.1 識別 ・ 製品の識別に対する「文書化された手順」
・ 返却された医療機器を適合製品から識別する「文書化された手順」
7.5.3.2.1 トレーサビリティ:一般 トレーサビイティに対する「文書化された手順」
7.5.5 製品の保存 ・ 製品を保存するための「文書化された手順」又は「文書化された作業手順書」
・ 保管期間が限定され又は特別な保管条件を要求される製品の管理に対する「文書化された順」
7.6 監視機器及び測定機器の管理 監視及び測定の「文書化された手順」
8.1 監視、分析及び改善:一般 参考:法令が統計的手法の応用及びその管理に対して「文書化された手順」を要求する場合がある
8.2.1 監視及び測定:フィードバック フィードバックシステムに対する「文書化された手順」
8.2.4.1 製品の監視及び測定:一般要求事項 監視及び測定の「文書化された手順」
8.3 不適合製品の管理 ・ 手直しプロセスの「文書化」
・ 手直しが製品に及ぼすすべての悪影響を特定し「文書化」
8.4 データの分析 データを収集し分析するための「文書化された手順」
8.5.1 改善:一般 ・ 通知書を発行し実施するための「文書化された手順」
・ 法令が不具合情報の通知を要求している場合、規制当局に対する通知の「文書化された手順」
8.5.2 是正処置 是正処置の「文書化された手順」
8.5.3 予防処置 予防処置の「文書化された手順」

4.記録に関する要求事項

ISO 9001に対して追加されている要求事項は以下の通りである。

条項番号 条項のタイトル 記 録 の 内 容
6.3 インフラストラクチャー 保守の記録
7.1 製品実現の計画 ・ 製品実現のプロセス及びその結果としての製品が要求事項を満たしていることを実証するために必要な記録
・ リスクマネジメントによる記録
7.3.3 設計・開発からのアウトプット 設計・開発からのアウトプットの記録(参考:仕様書、製造手順書、図面、技術日誌又は研究日誌)
7.4.2 購買情報 トレーサビリティに関連する購買情報の記録
7.4.3 購買製品の検証 検証の記録
7.5.1.1 製造及びサービス提供の管理:一般 各バッチのトレーサビリティに関して、製造数量・出荷承認数量の記録
7.5.1.2.2 据付け活動 据付け及び検証の記録
7.5.1.2.3 付帯サービス活動 付帯サービス活動の記録
7.5.1.3 滅菌医療機器に対する特別要求事項 滅菌プロセスパラメータの記録
滅菌の記録
7.5.2.1 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認:一般要求事項 妥当性確認の記録
7.5.2.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認:滅菌医療機器に対する固有の要求事項 各滅菌プロセスの妥当性確認の記録
7.5.3.2.2 トレーサビリティ:能動埋め込み医療機器及び埋め込み医療機器固有の要求事項 ・構成部品・材料・作業環境条件の記録
・ 代理業者/販売業者に対するトレーサビリティを可能にする医療機器の流通の記録の要求
・出荷梱包荷受人の氏名・住所の記録
7.5.5 製品の保存 特別な保管条件の管理の記録
8.2.4.2 製品の監視及び測定:能動埋め込み医療機器及び埋め込み医療機器固有の要求事項 検査又は試験を実施した要員の身元の記録
8.3 不適合製品の管理 特別採用を許可した人を識別する記録
8.4 データの分析 分析結果の記録
8.5.1 改善:一般 ・ 顧客苦情調査の記録
・ 顧客の苦情から是正処置/予防処置を実施しない場合、権限を持つ人がその理由を承認した記録

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