技術の伝承とベテランの処遇*ISOの活用について

はじめに
 食品企業における「技術の伝承」についての課題を述べるとともに、この作業を円滑に行う方法として、企業内の業務の運営におけるトータルマネージメントシステムであるISO 9001(品質)やISO 22000(食品安全)の活用を提言したい。

1.「団塊の世代」のフェードアウト
 「団塊の世代」の最後といわれる昭和24年生まれが還暦になり、会社の定年を迎えようとしている。企業にしてみれば、高額な賃金を受け取る高齢の社員が、会社を去ることで、固定費の低減に大きく寄与すると考える。一方で、熟練した有能な社員が職場を離れることで、組織の熟練度と戦力の低下が懸念される。一般に、企業は定年を迎えて職場を去る社員から若い社員への技術の伝承を義務付けている。しかし、実施の現場で、このような作業としての技術の伝承がスムースに行われているのであろうか。また、伝承がスムーズに行われるには、どのようなことが考えられるのであろうか。

2.熟練技術者と若年技術者
 食品企業における技術の現場では、永年の経験を持つ熟練技術者が、組織の運営と業務の遂行に有効に貢献している場合が多い。一方で、高齢な熟練者は、威圧的で若年者の成長を阻害しているとの認識をされがちである。このような認識をされた場合において配慮の足らない管理者は、組織に閉塞感があるとみなし一気に世代交代を行おうとする場合がある。しかし「角を矯めて牛を殺す」という諺のように、矛盾とみられる部分を急激に矯正しようとすれば、何らかの軋轢が生じやすい。いわゆる企業の目的は、「目標の達成による業績の向上」であり、そのための「組織の持続的な活性化」が必要とされている。このために、世代交代の時節におけるバランスのとれた「技術の伝承」が望まれる。

3.現場の状況(システムとツール)
 生産の現場では、従来の熟練者の作業を可視化して映像に録画して、技術の伝承に役立てようとしている。工場における作業のなかで、最も効率がよく生産性向上に寄与する動作を映像化することで、経験の浅い労働者のスキルを向上させようとしている。また、技術、研究の現場では、最新の技情報を身に付けた若い技術者が入ってくることで、組織の活性化がはかられているが、実務を伴う作業となれば、永年の経験がものをいう世界でもある。特に、「商品の開発」のような創造性を必要とする研究職においても、経験が必要である。よくいわれることであるが、「過去の成功体験にとらわれるな」新たな発想により、創造性を発揮せよとのことである。しかしながら、筆者の経験からすれば「成功体験の無い者は、成功へのプロセスが描けない」したがって高額な開発経費と長期の開発期間を必要とすることになる場合が多い。各種の困難を乗り越えて成功にいたる道筋を極めることは、大切であるが、身近に存在する成功体験者から、成功へのプロセスを聞いて、これをベースにマイナーチェンジで対応することが、効率のよい成果への道であると思う。多分に、成功には「運」がつきものであるので、運の無い者でも、成果につながるには、経験者に習い、学ぶことが早道である。また、これらの作業のプロセスをトータルで管理し、統括する方法として、効率のよいシステム化された手法を導入することも、必要である。

4.組織の運営と管理の手法
 技術の伝承を伴う、組織の運営と管理という意味からすれば、トータルマネジメントシステムといわれるISOの手法を取り入れることも、ひとつの考えである。ISO9001により、品質の維持を目的として、各種のチェックポイントを確認することで、バランスの悪い部分に焦点を当てて改善できる。また、ISO22000の食品安全により、安全な食品を製造するプロセスを理解できる。技術の伝承に、ISO9001とISO22000を導入することで、技術プロセスの基礎の部分を確立することができる。この基礎の上に発揮させる創造性や、感性は生来のものであることが多いといわれるが、この部分についても、「教育による力量の向上」のプロセスで、技を体系的に磨くことができる。これらは、技術の教育であり伝承のプログラムである。

5.システムの構築
 ISOは、マネジメントシステムであり、システム構築には、許容性が高いといわれている。ここで、ISO9001で、プロセスアプローチ、システムアプローチのように、システム管理により、食品の品質を企業のコンプライアンスにそった商品が作られる。実際の技術をともなう業務の現場では、研究者や技術者の多くが、個々の技術者に独自の方法で遂行することが定着しているようにみえる。特に、個性的な研究者の多い職場にこの傾向がみられる。これらの研究者や技術者の技術の伝承と継続的な技術開発がもとめられている。最近のように、「団塊の世代の退職」という状況でその傾向が多くみられる。これらを、システムとして管理する有効なツールとしてISO 9001とISO 22000の有用性が見直されるべきと感じている。

6.留意すべきこと
 ISOといえば、書類で管理することとの先入観があった。現に、「文書管理」、「記録管理」の要求事項はISO9001もISO22000にも存在する。しかしながら、文書の要求は、従来に比べて大幅に、対象が省略されている。通常の研究所の管理程度の文書で、済ませられる内容と理解している。

むすびに
 今回、「技術の伝承」を円滑に行う手法としてのISOの可能性について述べた。手法としてのハードが確立されても、基本は人間関係である。熟練技術者と若年技術者の相互の理解と納得のもとに実施されるべきである。特に必要なことは、熟練者、若年者ともに、謙虚な姿勢で臨むことが肝要であると思う。無機的な「組織論」が機能するかどうかは、感情へ配慮というソフトの緩衝材が必須である。合わせて、熟練技術者の再雇用を含む、継続と持続性のある運用が望まれる。



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