JIS Q 10006
マネジメントシステム −プロジェクトにおける品質マネジメントの指針

 この規格は、プロジェクトにおける品質マネジメントの手引きで、品質マネジメントの原則及び実践を概説する。これらの原則及び実践を実行することは、プロジェクトにおける品質目標の達成に重要であり、影響を与える。この規格は、JIS Q 9004で与えられる手引きを補足するものである。
 プロジェクトにおけるプロセスの概要が付属書Aに示されている。

1.適用範囲
 この規格は、種々の複雑さ、規模の大きさ、短期・長期、異なる環境のもとにあるプロジェクト及びプロジェクトに関わる製品又はプロセスの種類に関係なく適用できる。
 この規格は、プロジェクトマネジメントそのものの手引書ではなく、プロジェクトマネジメントのプロセスにおける品質に関する手引きについて述べている。
 この規格は、手引きを示す文書であるので、認証/審査登録の目的に用いることを意図していない。

2.引用規格
JIS Q 9000:2000 品質マネジメントシステム−基本及び用語
JIS Q 9004:2000 品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針

3.定義
次の9用語が定義されている。
 @活動  A利害関係者  Bプロセス  C進ちょく(捗)評価  Dプロジェクト
 Eプロジェクトマネジメント  Fプロジェクトマネジメント計画書  G品質計画書  H供給者

4.プロジェクトにおける品質マネジメントシステム
4.1.1 一般
プロジェクトの特徴の幾つかを示す。
− プロジェクトは、プロセス及び活動で構成される、独自の、反復することのない複数の段階からなる。
− プロジェクトは、ある程度のリスク及び不確実性をもつ。
− プロジェクトには、あらかじめ決定された限界範囲、例えば品質に関連する限界範囲で明記され、
  (最小限)定量化された結果を提供することが期待されている。
− プロジェクトには、明確に詳細を示されたコスト及び資源の制限内で、計画された開始日及び終了日
  がある。
− 要員は、プロジェクトの存続期間にプロジェクト組織に一時的に配置されることがある。
− プロジェクトは、長期にわたることもあるので、時間の経過とともに変化する内外の影響を受けること
  がある。


4.1.2 組織
この規格では、“プロジェクト起業組織”及び“プロジェクト組織”について述べる。
“プロジェクト起業組織”は、プロジェクトを始めることを決める組織。
“プロジェクト組織”は、プロジェクトを実施する組織。

4.1.3 プロジェクトにおけるプロセス及びフェーズ(段階)
プロジェクトは、目標の実現を計画及び監視する手段として、並びに関連するリスクを査定する手段として、相互依存するプロセス及び段階(プロジェクトのライフサイクルを構想、開発、実現、修了など管理しやすい区分)に分割する。

4.1.4 プロジェクトマネジメントプロセス
 プロジェクトマネジメントには、プロジェクトの目標を達成するのに必要なすべてのプロジェクトのプロセスに対して継続的に行なう計画、組織化、監視、管理、報告、及び必要な是正処置の実施を含んでいる。

4.2 品質マネジメントシステム

4.2.1 品質マネジメントの原則
この規格における手引きは、八つの品質マネジメントの原則に基づいている。(JIS Q 9000:2000、0.2参照)

4.3プロジェクトの品質マネジメントシステム
プロジェクトの目標を達成するためには、品質マネジメントシステムの枠内でプロセスを運営管理する。
プロジェクトを効果的に計画、実行、及び管理するために、必要な文書を定めて、管理する。

4.3.1 プロジェクトにおける品質計画書
プロジェクトの品質マネジメントシステムは、品質計画書を作成する。

5.経営者・管理者の責任

5.1 経営者のコミットメント
プロジェクトの効果的で効率のよい品質マネジメントシステムを開発し、維持するためには、トップマネジメントのコミットメント及び積極的な参画が、不可欠である。
トップマネジメントは、戦略決定のプロセスへのインプットをする。
プロジェクト組織はプロジェクトの完了で解散することがあるので、現行のプロジェクト及び将来のプロジェクトのために継続的改善の処置が確実に実行されるようにする。

5.2 戦略決定のプロセス

5.2.1 戦略決定のプロセスを通じた品質マネジメントの原則の適用
品質マネジメントの原則を適用して品質マネジメントシステムを確立、実行及び維持するための計画は、戦略決定、すなわち方向付けのプロセスである。

5.2.2 顧客重視
現在及び将来の顧客のニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を越えるように努力する。

5.2.3 リーダーシップ
リーダーは、目的を一致させ、組織の方向付けを確立し、目標を達成するために要員を全面的に参画できるようにする。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトを運営管理すること及びプロジェクトの品質マネジメントシステムを確立、実行、維持することに対する責任と権限をもつ。

5.2.4 人々の参画
プロジェクト組織の要員には、プロジェクトへの参加のために責任と権限をもたせる。

5.2.5 プロセスアプローチ
活動及び関連する資源を一つのプロセスとして運営管理する。
プロジェクトのプロセスを特定し、プロセスのインプット、アウトプット及び目標を特定する。プロセス責任者を特定し、その権限と責任を明確にする。

5.2.6 マネジメントへのシステムアプローチ
相互に関連するプロセスを一つのシステムとして、明確にし、理解し、運営管理することが、組織の目標を効果的で効率よく達成できる。

5.2.7 継続的改善
総合的パフォーマンスの継続的改善は、組織の永遠の目標であり、さらにプロセスの有効性及び効率を改善することを継続的に追求していく。

5.2.8 意思決定への事実に基づくアプローチ
効果的な意思決定は、データ及び情報の分析に基づき、プロジェクトの現況を査定するために、パフォーマンス評価及び進捗評価を実施する。

5.2.9 供給者との互恵関係
組織及びその供給者は相互依存しており、互恵関係は両者の価値創造能力を高める。

5.3 マネジメントレビュー及び進ちょく(捗)評価

5.3.1 マネジメントレビュー
プロジェクトの品質マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性及び効率を確実に継続させるために、計画した間隔で品質マネジメントシステムをレビューする。

5.3.2 進ちょく(捗)評価
進捗評価は、プロジェクトのすべてのプロセスについて行い、プロジェクトの目標達成状況を査定する。評価のアウトプットは、マネジメントレビューのインプットとする。

6.資源の運用管理

6.1 資源関連のプロセス

6.1.1 一般
資源関連のプロセスは、資源を計画し、管理することである。

6.1.2 資源の計画
プロジェクトに必要な資源を明確にし、プロジェクト日程表に従って、振り当てる。

6.1.3 資源の管理
資源計画と使用実績との比較を行い、必要な場合には処置をし、記録する。

6.2 要員関連のプロセス

6.2.1 一般
要員関連のプロセスは、要員が効果的で効率よくプロジェクトに貢献できる環境を作りだすことである。

6.2.2 プロジェクト組織構造の確立
プロジェクトの組織構造は、プロジェクトの役割を明確にし、責任と権限を定め、ニーズ及び方針に合うように定める。

6.2.3 要員の配置
要員に対して必要な力量を明らかにし、適切な力量をもった要員を選定し、配置する。

6.2.4 チームの育成
チームのパフォーマンスを高めるために、チームメンバーがそれぞれ力量をもち、動機付けさせるために、チーム全体及びメンバーの技量並びに能力を開発する。

7.製品実現

7.1 一般
製品実現に必要なプロジェクトマネジメントの七つのプロセスを示す。

7.2 相互依存関連のプロセス

7.2.1 一般
プロジェクトは、相互に依存する複数のプロセスからなるシステムで構成されていて、それらのプロセスの中の一つの動きが、他のプロセスに影響を与える。

7.2.2 プロジェクトの立ち上げ及びプロジェクトマネジメント計画書の作成
顧客及びその他関連する利害関係者の要求事項を評価し、プロジェクトプロセス及びそれらの目的を明確にし、プロジェクトマネジメント計画書を作成して、プロジェクトを立ち上げる。

7.2.3 相互作用の運営管理
プロセス間の相互依存関係を促進するため、プロジェクトの期間中にプロジェクトにおける相互作用を運用管理する。

7.2.4 変更のマネジメント
変更のマネジメントは、変更の明確化、評価、承認、文書化、実行及び管理を扱うもので、すべてにまたがる変更を運営管理する。

7.2.5 プロセス及びプロジェクトの終結
プロセスの終了時には、プロジェクトのパフォーマンスのレビューをし、すべての記録を編集する。顧客及びその他の関連する利害関係者からのフィードバックを入手する。

7.3 範囲関連のプロセス

7.3.1 一般
範囲に関連するプロセスの狙いは、
−顧客並びにその他の利害関係者のニーズ及び期待を、プロジェクトの目標を達成するために実施する
 活動になるように組織化する。
−要員がこれらの活動を実現する期間を通じて、範囲内で働くようにする。
−プロジェクトで実施する活動が、範囲に記述された要求事項を満たす。


7.3.2 概念の開発
製品及びサービスに対する顧客のニーズ及び期待を要求事項として文書化する。

7.3.3 範囲の明確化及び管理
プロジェクトの製品の特性を、判定可能な用語で明確にし、文書化し、管理する。

7.3.4 活動の定義
製品及びプロセスに対する顧客要求事項を満たすために、プロジェクトを運用管理しやすい活動及び手段を特定し、文書化する。

7.3.5 活動の管理
プロジェクト内の活動は、プロジェクトマネジメント計画書に従って実施し、管理する。

7.4 時間関連のプロセス

7.4.1 一般
時間関連のプロセスは、依存関係及び活動の所要時間を決定する。

7.4.2 活動の依存関係の計画
プロジェクトの活動間の相互関係並びに論理的な相互作用及び依存関係を明確にし、一貫性をもたせるためにレビューする。

7.4.3 所用期間の算定
プロジェクトの特定の条件及び必要な資源に関して、個々の活動の期間を算定する。

7.4.4 日程表の作成
特定プロジェクトの条件に適合するように全体の日程表及び詳細日程表を作成するために、プロジェクトの時間目標、活動の依存性及び活動の期間を相互に関連づける。

7.4.5 日程の管理
プロジェクト日程表を確認し、プロジェクト進捗を分析し、遅延を回避するための適切な処置をとって、プロジェクトの活動の実現を管理する。

7.5 コスト関連のプロセス

7.5.1 一般
コスト関連のプロセスは、プロジェクトのコストを予測し、運営管理することである。

7.5.2 コストの算定
プロジェクトのすべてのコストを明確にして、コストの見積書を作成する。

7.5.3 予算の作成
プロジェクト予算は、コストの見積書及び日程表に基づいて決定する。

7.5.4 コストの管理
コストを管理し、プロジェクト予算からの逸脱があれば特定し、その差異を分析して処置する。

7.6 コミュニケーション関連のプロセス

7.6.1 一般
コミュニケーション関連のプロセスは、プロジェクトに必要な情報の交換を促進することである。

7.6.2 コミュニケーションの計画
プロジェクトの情報システム及びコミュニケーションシステムを計画し、計画書を作成する。

7.6.3 情報の運用管理
情報のニーズを明確にし、情報マネジメントシステムをつくる。プロジェクトの情報を運用管理するための手順をつくり、プロジェクト組織のメンバー及び他の利害関係者が、必要な情報を利用できるようにする。

7.6.4 コミュニケーションの管理
コミュニケーションシステムを計画し、それに従ってコミュニケーションを管理する。

7.7 リスク関連のプロセス

7.7.1 一般
プロジェクトのリスクの運営管理では、プロジェクト全体を通じて不確実性を扱う。
なお、“不確実性”は、否定的側面と肯定的側面があり、肯定的側面は、普通は“機会”と呼ばれる。(“リスク”の用語は、この規格では“不確実性”と同じ意味に使う。)

7.7.2 リスク特定
プロジェクトの立ち上げ時、進捗評価時及びその他、重大な意思決定をする場合に、リスクを特定する。

7.7.3 リスクアセスメント
プロジェクトのプロセス及びプロジェクトの製品に対して特定したリスクを分析し、評価する。その方法は、特定されたリスクが生じる発生確率及びリスクがプロジェクトに与える影響を評価する。

7.7.4 リスク対応
リスクを回避し、軽減し、移転し、分散し、又は受容するための解決策、及びリスクへの対応するための計画書を作成する。

7.7.5 リスクコントロール
プロジェクト全体を通じて、リスク特定、リスクアセスメント及びリスク対応を繰り返し行なうプロセスによって、リスクを監視し、管理する。リスクマネジメント計画書を実行し、更新する。

7.8 購買関連のプロセス

7.8.1 一般
購買関連のプロセスは、プロジェクトのための製品入手について扱う。

7.8.2 購買の計画及び管理
入手すべき製品を明確にし、入手日程をたてた購買計画書を作成し、管理する。

7.8.3 購買要求事項の文書化
購買文書では、製品、その特性、商取引上の条件、品質マネジメントシステム要求事項及び関連文書を明確にする。

7.8.4 供給者の評価
プロジェクトに対する供給者を、技術的経験、生産能力、納期、品質マネジメントシステム、財政上の安定性などプロジェクトに影響を与える可能性のあるすべての供給者の側面を考慮して評価する。

7.8.5 契約の締結
供給者への引合い、入札評価、交渉、供給者の品質マネジメントシステムの評価をし、契約を締結する。

7.8.6 契約の管理
契約の締結の時点から、契約者のパフォーマンスを監視し、それが契約上の要求事項を確実に満たすように管理する。

8.測定、分析及び改善

8.1 改善関連のプロセス
 8.では、プロジェクト起業組織及びプロジェクト組織がプロジェクトからどのように学ぶかについての手引きを提供する。
測定の結果及びプロジェクトのプロセスから得られるデータの分析結果から、現在及び将来にわたるプロジェクトの継続的改善をすすめるため、是正処置、予防処置及び損失防止の手法を適用する。

8.2 測定及び分析
組織のパフォーマンスを改善し、顧客及びその他の利害関係者の満足を高めるために、データの測定、収集及び妥当性確認を効果的で効率よく行う。

8.3 継続的改善

8.3.1 プロジェクト起業組織による継続的改善
プロジェクト起業組織は、プロジェクトマネジメントのプロセスを継続的に改善するために、そのプロジェクトのための情報マネジメントシステムを設計し、プロジェクトの適切な情報を特定し、収集する。これらの情報を使用する前に、それを使用することの妥当性を検証する。

8.3.2 プロジェクト組織による継続的改善
プロジェクト組織は、プロジェクトの情報マネジメントシステムを、プロジェクトから学ぶことに関してプロジェクト起業組織が明記した要求事項を実行するように計画する。プロジェクト組織は、プロジェクト起業組織が確立したシステムから得られる、プロジェクトに関連する情報を使用して、改善を実行する。

付属書A プロジェクトにおけるプロセスの構成図


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