ISO 9001規格の2015年改正版に基づく企業体質強化について

1.はじめに
 ISO9001の2015年改正版は2015年9月15日に発行された。企業(組織)に向けて2つのポイントを発信しています。こ規格が「経営者に対するメッセージ」であること。「既存のマネジメントシステムの形骸化・二重化があるなら見直すチャンス」であること。これらを踏まえて、規格改正の狙いとしては、@ISO9001に基づくQMSに関する顧客の信頼感を向上させる。Aあらゆる組織に適用可能な規格とする。B附属書SLを適用する(ISOマネジメントシステム共通の構成)。Cプロセスアプローチの理解度向上を図る。

2.企業(組織)に向けての発信ポイント
規格改正の最も大きな主旨は、経営者に対するメッセージである。例えばISO9001は94年版までは「品質システム」であり、2000年版になって「品質マネジメントシステム」になりました。今回の改正は、「品質マネジメントシステム」という言い方は同じなのですが、経営システム、あるいはマネジメントのためのシステム品質版といったイメージで、レベルがもう一段アップしたようなものです。その理由は、どのISOマネジメントシステムにも共通する構造(箇条構成)の採用です。特に、規格冒頭に出てくる「4.1組織及びその状況の理解」「4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解」「4.3品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」は、今まで内向きのイメージがあったISO9001を、一気に外へ向けてアンテナを張り、経営者は経営課題として、内外の事業環境の変化によって的確に品質マネジメントシステムを変えなければならないことを要求事項としてはっきり打ち出しました。それは、ISO14001やISO/IEC27001など、ISOマネジメントシステム規格すべてに共通することで、まさに経営者に対するメッセージであると言えます。
しかし、実際にシステムとして何を変えなければならないかというと、現場レベルでは大きく変える必要はないと考えています。「今回の改正は、今まで運用してきたシステムを見直すチャンスです。形骸化・二重化しているところがあれば、この機会に解消してスリムにしましょう」といメッセージです。規格改正版のキーワードである「組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする」(5.1.1のc)は、まさに形骸化・二重化を見直し、業務と一体となったシステムを求めています。これは、「現状を肯定しつつ、改正規格に対応してください」というものです。今やっているものがダメで、新しく衣替えしないといけないということではなく、現状のシステムを生かして改正規格に対応できていない部分を補っていけばいいのです。
例えば、ISO9001では「リスク及び機会への取組み」という新しい要求事項があります。これは、組織を取り巻く事業環境の変化によって生じる、品質に関する大きな事業のリスクも日常的な小さな運用のリスクも、マネジメントシステムの中で取り組んでいかなければならないということです。このように、改正規格が言っていることは、ごく当たり前のことで、ISOがやっと世間(社会の実態)に追いついたという感じですが、これにより利用価値は高まったと言えます。

3.9001改正の主な変更点
「主な変更点」としては、以下の9項目が挙げられる。
イ)附属書SLの適用:附属書SLでは、異なる分野のISOマネジメントシステムの整合化を図る目的で、規格の構造に加え規格に共通な要求事項(方針、目標、責任及び権限、力量、文書管理、内部監査、マネジメントレビューなど)が規定されています。(附属書SLは、ISO規格作成者のためのものです。)
ロ)組織の状況の理解とQMSの適用範囲の決定:品質マネジメントシステム(以下、QMS)の適用範囲の決定が要求事項として求められています。(箇条4.3)。組織がQMSについて抱えている課題は何か(箇条4.1)。顧客、その他の利害関係者が組織の製品・サービスに期待していることは何か(箇条4.2)。これらの課題、期待を考えたとき、どの範囲、活動を管理しなければ、品質確保できないか、すなわちQMSの適用範囲を決めることを規格は求めています。QMSの構築は、その目的を明確にして取り組むことを規格は求めています。

ハ)プロセスアプローチの適用向上、それを支援するPDCAサイクルとリスクに基づく考え方
箇条4.4(QMS及びそのプロセス)にプロセスアプローチに不可欠な要求事項が追加されています。この中でリスクへの取組みについて追加されているのがひとつの特徴です。リスクについては箇条6.1(リスク及び機会への取組み)で要求されていますが、これは「計画の策定段階で、まず懸念されるリスク考え、そのリスクに対する対策を計画に組み込んでから運用を開始する。すなわち未然防止活動をいままで以上にしっかりやること」を要求する主旨です。

ニ)リーダーシップの強化:「箇条5リーダーシップ」では、トップのリーダーシップに関する要求事項が強化されました。以下が改訂規格の箇条5.1.1(リーダーシップ及びコミットメントの一般)においてトップがリーダーシップ及びコミットメントを実証する必要がある事項です。
   ・QMSの有効性に説明責任を負う。
   ・組織の事業プロセスへのQMS要求事項の統合を確実にする。
   ・プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進する。
   ・QMSがその意図した結果を達成することを確実にする。

ホ)組織の意図した結果、顧客満足の向上、パフォーマンスの強調:
「QMSの意図した結果」は組織により異なりますが、基本は、規格の箇条1(適用範囲)に示されている、「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する能力を実証する」場合と、「顧客満足の向上を目指す」場合とになります。

へ)明示的な文書化要求の削減:明示的な文書化の要求は削減されています。2008年版における品質マニュアルや6つの文書化した手順書は要求されなくなっています。

ト)規範的な要求事項の削減:組織にこの規格を主体的に使ってもらうため、規範的な要求事項は減りました。規範的として削除された要求事項としては、@2008年版箇条5.5.2管理責任者 トップによる管理責任者の任命要求を削除 など

チ)サービス業への配慮:製造業だけを意識した規格は、サービス業のユーザーから見放されるという考えにより、あらゆる組織に適用できるように配慮しています。

リ)QMS固有の要求事項の強化、追加、拡大:QMS固有の要求事項を強化、追加または適用拡大として以下の改訂が行われています。
   ・組織の知識に関する要求事項の追加 ・ヒューマンエラーに関する要求事項の追加
   ・引渡し後の活動に関する要求事項の強化 など

 4.企業体質強化の考え方
(1)改訂規格は、組織(企業)の活動に影響する外部及び内部の課題を取り上げていることから組織のビジネス(経営)の重要性を認識している。それぞれの組織に、QMSを設計する方法に関する「レシピ」を規定することよりも、自組織の特定の状況について考えることを義務づけており、組織は、より柔軟に規格の要求事項の実行方法を決めることができることを示唆(提案)している。

(2)改訂規格の要求事項として、QMSを戦略的計画及び事業プロセスにつなげるので、より一層、体質強化を実現できる頑強(ロバスト)で、かつ企業経営に実効のあがる取組みにつながると考えられる。

(3)大部分の中小企業はかなりの程度までリスクを管理しているが、中小企業の多くのリーダーたちが、リスク管理に積極的になれないのは、リスクマネジメントを必要とするほど大きな企業ではないと信じているか、あるいは会社運営で手一杯だと感じているからだと思われる。改訂規格が示している「リスクに基づく考え方」というワードを導入することにより、組織(企業)をさらに積極的に目標達成に向けて活動することになり、「組織がリスクに基づいてビジネスについての決断を下す」ことが期待される。



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