化学品安全規制の国際動向と対応

[1]規制の動向と対応

1.はじめに
 化学物質安全規制の国際的な始まりは1992年のリオデジャネイロのサミットでのアジェンダ21の第19章「有害化学物質の環境上適正な管理」の7項目である。 欧州では積極的に検討され具体化されてきた。 わが国もこれに対応し始めている。 本報は主として国際的な規制動向の内容及び対応について、第2回目は具体的な内容、第3回目は使用事例について述べる。 現状の化学物質規制内容の流れを化学物質のライフサイクルの面からみると次のようになる。

@製造;川上規制のREACH(リーチ)規則⇒A使用加工;川中規制のGHS(ジーエィチエスシステム)⇒B製品製造・販売;川下規制のRoHS(ローズ)指令⇒C製品の3R廃棄;WEEE(ウイー)指令。 詳細は図-1参照。

製品含有化学物質の規制等の国際的な潮流と対応
図−1 製品含有化学物質の規制等の国際的な潮流と対応

2.化学品の安全管理とは
(1)取り扱う化学品(以下化学物質を含む)の関係法律を遵守しながら自主安全管理。
(2)人や環境への有害性に関する化学品の物質安全性データシート記載のMSDSデータの提供・入手・利用を
  する。
(3)有害性物質については、人や環境に対する暴露量・濃度を測定或は推算をする。
(4)暴露量と許容量を比較するリスク評価するリスクアセスメントを実施する。
(5)「リスク」=「ハザード」×「暴露量」で、リスクの大きい物質からより安全な物質への代替等やリスク低減に
  努める。

3.国内外の化学品安全管理規制の内容
 EUの「規則」とは加盟国内では国内法と同等の扱い。 「指令」とは加盟国を拘束するが、方法・手段は任せる内容である。
(1) REACH規制(Registration・Evaluation・Authorization・Restriction)
 日本の化審法に相当する。EUでは発がん性、変異原性、安全性等が疑われるリスクアセスメントの安全データ
 などを準備し、登録することが義務付けられる。 また、EUはリスク評価に必要なデータが集積できるシステム
 構築の必要性から、
@検査の主体を各国の検査機関から企業に切り替えて迅速化を図り、費用は企業が負担する。
A既存物質と新規物質を同列に扱うシ評価システムを導入する。 この根底にあるのは予防原則である。
B EU 諸国と非 EU 諸国を同一の扱いをする。

(2) GHS(Globally Harmonized System of Classification & Labeling of Chemicals)
 国連策定の化学品の分類・表示調和システムで日本のPRTR法やMSDSシステムに相当する。
@化学物質の有害性を分類し、ラベルや(M)SDS情報提供を行う共通の統一されたシステムで、輸出入時には
 非常に便利である。
A対象は、労働者、消費者、輸送関係者、救急対応者など。
B化学物質管理に関する包括的システム確立の基礎C現状の取組としては、2008年の実施が目標となって
 いる。

(3)RoHS指令(Restriction of Hazardous Substances):2006年7月よりEU加盟国に電子・電気機器を上市する
 場合に有害規制を遵守しないと輸出できなくなる。情報報告の義務付けがある

(4)WEEE指令(Restriction of Waste electrical & electronic equipment) 日本の廃棄物処理法相当。
 電気・電子機器の廃棄処分を減らすために分別、再生処理、リサイクルを推進する指令で、2005年8月以後に
 適用されている。

4.国内の化審法・PRTR法等の改正動向
 見直し時期は2008年以後開始予定である。
 安衛法は2006年12月改正されGHSに準拠したラベルや文書の交付実施を施行した。

参照文献 環境管理2007Vol.43


[2]化学品安全規制の具体的な内容

1.はじめに
 前回(その1)は化学品安全規制の国際的な動向について報告したが、今回は規制の具体的な内容動向について述べる。
2.川上規制のリーチ規則1)
 REACH(Registration,Evaluation,Authorisation and Restriction of Chemicals)
EUは2008年6月より量的に多い物質や高懸念物質を優先しながら、約3万物質について登録、評価、認可、制限を2018年までに下記の手順で行う。

(1)登録;年間生産量1tを超える既存及び新規化学物質の約3万種類を次の3段階に分けてEUの化学品庁に情報登録する。 @物質の物理化学特性A毒性学・人の健康に関する情報B生態毒性学・環境に関する情報。
(2)評価;年間生産量100tを超える化学物質および当局が評価必要と判断する約5000種類には、人体への長期的暴露データを中心に2段階に分けて評価する。
(3)認可;およそ1500種類と見積られているCMR(発がん性、変異原性、催奇性)など人体への悪影響が懸念される物質を基本的に使用禁止とし、使用する場合は許可制とする。 これらの物質は、登録・評価の後でなく、初めからEUの化学品庁が指定する。
(4)問題点:申請企業の費用が大変でコンソーシアムを形成して登録する必要があろう。 日本の化審法で200万円に対してREACHでは1000t超対応では慢性毒性、発がん性、蓄積性等で費用8000万円〜が見込まれている。

3.国内における化審法改正の動向
 化審法は従来の難分解性着目に加えて、上記のREACHに含まれている規制項目追加の検討が2008年より開始される。

4. 川中規制のGHS規則に対応したMSDS2)3)4)
 (Globally Harmonized System of Classification & Labeling of Chemicals)
GHSは従来のMSDS規定よりも有害性や文書・絵を含むラベル表示等での内容を拡げている。 全面改訂したMSDSは2005年12月にJISZ7250として発行された。 下記にGHSに対応したMSDS及び文書見本を示す。

5.川下規制のRoHS指令5)
(Restriction of Hazardous Substances):制定目的は「有害物質の使用制限により電気電子機器が不適切な処分や経時変化による汚染防止」である。 主要対象品は使用樹脂の添加難燃剤であるポリ臭化ビフェニル
エーテル(PBB)の使用抑制にある。 2006年7月制定。

6.川下規制のWEEE指令5)
(Restriction of Waste electrical & electronic equipment)。
 日本の廃棄物処理法に相当。
制定目的は「電気電子機器を環境の保全と保護ならびにその保全と保護及び人の健康の保護し資源の保護」である。 有害物質の使用制限の主要対象は水銀、カドミ、鉛である。

参照文献
1)「REACH規則と企業対応」REACH研究室  2),3)「安全衛生コンサルタント」2007.Vol27.No28
4)「環境管理」11 2007Vol43(社)産環協 5)「よくわかるWEEE&RoHS指令」日本電子渇棊p研究センター
GHSラベル
【図-1】 GHSに基づくラベルの例

製品含有化学物質の規制等の国際的な潮流と対応
図-2 GHSに対応したMSDSの内容と作成手順


[3]化学品のリスクアセスメント

1.GHSデータの使用事例
 旧MSD とGHSとの相違点は「化学物質は全て有害としている点である」。 即ち、化学物質との接触曝露を重要視している。 下記にリスクアセスメントの事例を紹介する

2.ジクロロメタン(CH2CL2)を事例にした  リスクアセスメント
 ジクロロメタンを合成脂成形用に添加使用している事業所が作業環境改善の参考資料ためにリスクの評価を行った事例を紹介する。

3.ジクロロメタンの使用のリスクの算定
 見積方法と総合評価
算定方法は「GHS製品安全データシート」からジクロロメタンのリスクの算定に必要なデータを下記の評価資料から引用して[表-1]の作業状況資料と組み合わせてリスク総合評価を行う。

[表-1] ジクロロメタン使用の作業状況事例
No. 項  目 使用・運転状況
1 受入と移液 タンクローリーで受け入れ5m3貯槽に保管し、ポンプで成形機に自動送液
2 取扱量 週平均2000L
3 作業時間 週休5日2交代制で1500Hr/年
4 換気と作業 局所排気。運転監視調整作業

[評価方法];「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指指針」(厚生労働省) 公表の(1),(2),(3)項の内容を参照して記載する。 定性的なリスクの下表算定評価を行う。

[表-2] ジクロロメタン使用の作業環境をGHSデータによりリスク算定評価した事例表
  評価算出項目 適用項目の記載 設定条件の有害性区分値 評価算出項目結果値
(1) 有害レベル[HL] (1) 項の有害性毒性と発がん 左記項目のB項を適用する 発がん性→B -2 {HL}=[B].[2]
(2) A;取扱量の区分 (2) 項の曝露レベル
A.取扱量=2000L
左記項目のA-3項を適用する[Kg,L] 「L」→中量→2 A⇒[2]
B;揮発性 (2) 項の曝露レベル
B.沸点;40℃
左記項目のB-3項を適用; 高揮発性 高揮発性→3 B⇒[3]
C;換気性 (2) 項の曝露レベル
C,;換気
左記項目のC-3項を適用; 局所排気 局所排気→3 C⇒ [3]
D;修正項 (1) 項の曝露レベル(2)
D;化学物質汚れ
左記項目のD-0項を
適用; 汚れなし
修正項→0 D⇒[0]
作業環境レベルル[ML] の算出 (2) 項の[表-1]
ML=A+B-C+D
上記A〜D値代入
2+3-3+0=2
ML=2⇒d ML⇒[2],[d]
(3) 作業時間 (FL) (2) 項のイ[表-2]
作業時間区分
左記項目の表-2適用1,500Hr/年⇒ @ FL→@ FL⇒[@]
(4) 曝露レベル(EL)
[表]A-Aより
ML+FL⇒EL決定 (2)-別表-3 参照 ML=d+FL=i[IV] EL⇒[IV]
(5) リスクの見積り (3)項表-4リスク表 BとIV⇒4 B・IV⇒HL・EL HL・EL⇒4


4.GHS方式によって化学品を安全性評価した結論
 冒頭で述べたように、化学品に曝露接触の要素を加えると化学品の有害性が拡大されて安全管理は大幅な見直しが必要になるケースが発生する。 現在、業界では化学品の安全管理の大本になっている化審法、PRTR法が改正になっていないにも係らず、労働安全衛生法は安全表示を施行し、またEU向け輸出が化審法に該当するREACH規制発動対応準備のために、末端の現場では対応が大変となっている。 この普及には手間ひま掛る現状であり技術士としては取り組む価値のある問題であると考えられる。


化学物質等の有害性と曝露量によるリスク算定基準表

化学物質等の有害性と曝露量によるリスク算定基準表 (新規ウィンドウで開きます)


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